松浜のスーパーの⼀⾓に誕⽣したニュースポット・クロスハーバーができるまで
竣工日:2019年
2019年にオープンした新潟市北区の松浜地区にある「CROSS HARBOR(クロスハーバー)」。こちらは地元で⻑年愛されてきたスーパー「かみの井」の空きスペースを活⽤した施設で、平⽇は障がい者就労継続⽀援B型の場として、⼟⽇祝⽇はシェアキッチンやレンタルスペースとして多くの⼈が交流する場所になっています。
かみの井のオーナーである井嶋敏弘さんに、クロスハーバーが⽴ち上げられた経緯についてお話を伺いました。
――どのようにしてこの場所にクロスハーバーがつくられたのでしょうか︖
まず、クロスハーバーが⼊っているこの「かみの井」の歴史について話しますね。この建物は1970年に完成し、その後事業の拡⼤に合わせて増築をしていったんです。
僕は出⾝が⼤阪なんですが、25歳くらいの時に婿⼊りという形でかみの井に⼊り、事業を継ぎました。
平成元年(1989年)頃が全盛期でしたが、その後もインターネットカフェをやったり、印刷業をやったりと、いろいろなことをしていました。
SONYの初代のサイバーショットっていうデジカメを置いていて、レンズが180度回るタイプだったのでお客さんに⾃分で写真を撮ってもらってプリクラを印刷するサービスなんか
もやっていましたね。
ただ、時代の流れと共に⼈が集まりにくくなり、売り場は縮⼩。使わない空間が増えていきました。
そこで、店の空いているスペースを、新たに地域に開かれた場所として活⽤できないかと考えていて、2017年頃にハマ不動産の⼩林啓⼀郎さんに相談をしたんです。
ハマ不動産さんとは前社⻑である啓⼀郎さんのお⽗さんと商⼯会⻘年部で⼀緒になり、それからずっとお付き合いさせて頂いています。
で、どんな場所にしたかったかと⾔うと、もう閉館しちゃったんですけど、僕はスーパー銭湯のホンマ健康ランドがすごく好きだったんで、そういう場をつくれないかなと思ってい
て。
ホンマ健康ランドは、週末に⾏っても適度にすいていて、サウナやお⾵呂に⼊ったり、⼊浴後も漫画を読んだりしてゆっくり過ごせる。そこがすごく気に⼊っていました。
ちょうどその頃、啓⼀郎さんが「松浜Rプロジェクト」という団体を⽴ち上げて、松浜地域の空き家を調査し活⽤法を考える活動を始めていたタイミングとも重なりました。
そのプロジェクトに参加をしていた建築⼠の⼩林紘⼤さんによる「今まで建物の裏側だった川に⾯した場所を開いて、そこを表側にしてみては︖」というアイデアを採⽤し、建物裏
⼿を流れる新井郷川分⽔路に開く空間をつくることになりました。
クロスハーバーがあるのは建物の⼀番奥で、元々はかみの井の売り場だったんです。
リノベーションをする前は、売り場を縮⼩していた関係で、バックヤードになっていました。
――⻑い歴史があるスーパーなんですね。結果的にサウナやお⾵呂はつくらなかったんですね︖
できればやりたかったですが、それをやると莫⼤なお⾦が掛かってしまうので…(笑)。
クロスハーバーは2015年に⽴ち上げられたまちづくり会社「株式会社まちづくりにいがた北」が運営を⾏う形を取っています。
話し合いを進めて⾏く中で、はじめにシェアキッチンとして使っていくことが決まりました。飲⾷店を始めようとする⽅のチャレンジの場にもなったらいいなと。
ただ、レンタルスペース事業だけで収益を出していくことの難しさが課題になっていました。
そこで、福祉関係の仕事をしている⽅から、「障がい者就労継続⽀援B型のためのスペースとして使いたい」という話が上がり、平⽇は障がい者の⽅の就労訓練を⾏う場として活⽤をしていて、厨房設備を利⽤したクッキー作りなどが⾏われています。
レンタルスペースの⽅は⼟⽇祝⽇を中⼼にイベントやワークショップなどを⾏う場として活⽤いただいていますね。
あと、コロナの影響でストップをしてしまいましたが、新潟医療福祉⼤学栄養サポート部の学⽣さんとコラボして、⽉1回の⼦ども⾷堂を開いたりもしていました。
――今までになかった場がかみの井の中に⽣まれたんですね。ところで、2018年にはかみの井の改装もしていたんですか︖
そうです。クロスハーバーがオープンする1年前にかみの井の改装も⾏いました。
正⾯⼊り⼝から⼊ると、中⼼に通路があってその両側に売り場がありますが、パーテーションを増やして、服やコスメ、⽇⽤品などを売るスペースを以前よりも独⽴させるようにしました。
それぞれの売り場が専⾨店化するようなイメージですね。
コスメコーナーの中を仕切って新たにエステルームを作ったりもしています。
真ん中の通路をずっとまっすぐ歩いて⾏くとクロスハーバーにたどり着くようになっているんです。
クロスハーバーの少し⼿前は多⽬的に使えるフリースペースにしていて、そこではニットカフェを⾏っていますが、最近は利⽤者の⽅が講師となってパッチワークを教える教室も始
めました。
ニットカフェは改築前からやっていますが、松浜に住む⽅が集まれる場所になっていますね。
コロナが落ち着いたら、フリースペースを多⽬的に使えるカフェにしたいと考えています。あと、⼿芸をやる⽅が多いので、⼿芸関係の商品を充実させてより専⾨性を⾼めていきた
いですね。
――かみの井も⼩売業を⾏うだけでなく、地域の⼈が集まる場として活⽤されてきたんですね。クロスハーバーができたことで、どんなメリットが⽣まれましたか︖
いろんな⼈がこの場所に集まって何かを始めるようになりましたね。それに伴って、かみの井の魅⼒も⾼めていかなければいけないと思うようになりました。
新しいやり⽅や考え⽅を学ぶことができたのも、クロスハーバーを⽴ち上げることで得られたことです。例えば、建物の裏側の壁を壊して外に開くという発想は⾃分では思いつかな
かったことですから。裏側は古い⼩屋が⽴っていて汚かったんですが、そのマイナス部分が使えるのか…と、その柔軟な発想に驚かされました。
計画をしていたウッドデッキも最近完成し、⼀層魅⼒がアップしたと思います。例えばそこでバーベキューをやるとか、また新しいことがやっていけるんじゃないでしょうか。
――クロスハーバーをつくる過程で苦労したことはありますか︖また、今後の展望について教えて頂けますでしょうか︖
やはり費⽤⾯が課題でしたね…。商店街活性化のための補助⾦を活⽤できたことで⼯事をすることができました。それに、新しいことをやろうという時に⼀⼈で考えていてもなかな
か前に進めないものですが、意思のある⼈たちが集まったことで実現できたと思っています。
⼀時期、ラーメンやカレーなどを出す⾷堂を始めたこともありましたが、いろいろなことに挑戦しているために「何がしたいのか分からない」という声を頂くこともあります。
ただ、何か変わったことを始めると、そこから物事は転がり始めるものだと思っていますので、クロスハーバーで⾃然に起こっていくさまざまな活動や変化を楽しみにしているとこ
ろです。